光のもとでⅠ
 カップを自分に引き寄せると俺に背を向ける。
 体育座りでガラス張りの方を向き、背にはきれいな髪がさらりと波打っていた。
 君が好きだよ……。
 言葉だけですべてが伝わらないのなら、行動に移してもいいかな。
 自分の足の間に彼女を挟み、後ろから抱きしめた。
 昼間のそれよりは少し強く、もっと密着して。
「秋斗さ――」
「やだって言えないなんて言われたらさ、なんでもしたくなっちゃうよね」
 ごめんね。
 でも、君のその言葉も悪いと思うよ。
 男って生き物を少し俺で学ぼうか?
 携帯はサイドテーブルに置いてある。
 でも、今はこれだけ密着しているから、彼女の心音はダイレクトに伝わってくる。
「っ……秋斗さん、お茶、零れちゃうっ」
 努めて冷静に――そんな感じかな。
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