光のもとでⅠ
 わかってたんだ、そんなこと……。
 けれど、前日は手さえ握れなかった彼女があんなにも思いつめた顔をして、どうしても手をつなぎたいと言った。
 それをクリアすれば、「少し甘えてもいいですか?」と自ら俺に身を寄せた。
 これで期待しない男はいないだろう。
 抑えきれなくなった俺は、彼女が初めてであろうディープキスをした。
 それであんな反応を見せられたら――そのあとの期待をしてもおかしくはないんじゃないだろうか。
 すべてが覆って、彼女は俺を受けて入れてくれるんじゃないかと思ったんだ。

 バスタブに浸かり、携帯を発信させる。
 こんなとき、生活防水対応の携帯は便利だ。
『何かありましたか?』
 かけたのは若槻の携帯。
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