光のもとでⅠ
 わかっているけれど、話しかけたかったんだ。
 すぐ近くにいる彼女に。
 起こして話をしたいとか、そういうわけではなく、ただ声をかけたかった……。
 自分の声が届くところに君がいるから。

 一度握らせたそれを手首に通すと、仰向けに寝かせた彼女がこちらを向き身体を丸める。
 寒いんだな……。
 そう思って布団を一枚ずつ丁寧にかけた。
 しばらくの間、ベッド脇に座り込み彼女の寝顔を見ていた。
「……なんだって君はこんなに無防備かね?」
 苦笑のような笑みがもれる。
 顔にかかった髪の毛を払うために手を伸ばした、
 その髪の感触が懐かしくて、額から頭にかけて、何度も何度も手櫛を通した。
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