光のもとでⅠ
「そろそろ限界……」
 携帯を手にしてバスルームへ移動する。
「あのさ、俺と翠葉ちゃんを助けると思ってこっちに来て」
『スタンバイしてましたよ。で、翠葉は?』
「風呂から上がったら寝てた……」
『くっ、やっぱり。そんな気はしてたんですよね』
 蒼樹は苦笑する。
 上に着ているものを脱がせようとしたときの話をすると、
『あぁ、じゃ、もしかしたらもう朝までは起きないかもしれませんね。相当疲れてるんだと思います』
 正直、こんなに穏やかな表情で寝ている彼女を起こしたくはなかった。
 昼にも彼女の寝顔は見たけれど、彼女が横になっているところを思い出そうとすると、記憶によみがえるのは夏休み中の彼女だけ。
 やつれきった顔をしかめた状態で寝ていた彼女の印象が強すぎる。
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