光のもとでⅠ
「蒼樹が大事に守ってきた理由が少しわかったかな」
「……あのっ……」
「ん?」
「今度、蒼兄の高校のときのお話を聞かせてもらえますか?」
「いいよ。じゃ、蒼樹がいないときがいいね」
 なんて、いたずらっぽく笑ってくれる。
 そんな話をすれば十階に着き、高崎さんの表情が強張った。
 エレベーターの前で秋斗さんが仁王立ちしていたのだ。
「葵くん……どうして君が彼女を抱っこしてるのかなぁ」
 きれいな笑顔からは冷気が漂う。
 笑顔なのに目が笑っていない。
「あのっ……ごめんなさい――」
「どうして翠葉ちゃんが謝るの?」
「私がお願いしたから……」
 答えると、秋斗さんの顔から笑顔が消えた。
「とりあえずうちに……」
 と、葵さんにエレベーターを出るように促す。
「ね、このあとふたりで大丈夫?」
 高崎さんに小声で訊かれた。
「自信はないです……」
「ふたりしてなにこそこそ話してるの?」
 抑揚すら感じる声にビクリと身が震える。
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