光のもとでⅠ
 その意見には賛成だが――。
「翠が理解する前に倒れたら?」
「それをセーブするのが俺たちの役目なんじゃない?」
「そのたびに『葛藤』させてる」
「翠葉のネックがそこなら、何度でも『葛藤』させて考えさせて、わからせるしかないでしょーが。何言ってんだか、まったく……」
 まるで刷り込まれた条件反射をさらなる条件で上書きしている気分だ。
「これだけはさ、俺たちの特権ぽくね? 年上組にはできないこと」
 意表をつかれた気がした。
「俺たちはまだ十六、七で経済力も社会的地位なんてものもないけれど、翠葉と同じステージには立てるわけで……そこでしかできないことって結構あるよね? 大人の包容力で包み込んで守っちゃうんじゃなくてさ、対等の立場で、同じ目線でここは違うって教えられる。諭すとかそういうことじゃなくて、言わば実地訓練」
 ふ、と笑みがもれる。
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