光のもとでⅠ
「司、六時! 飯食いに行こうっ!」
 海斗はひとり先に部屋を出ていく。
 俺は今一度考えをまとめるためにその場に留まっていた。
 翠の気持ちを想像して補ったところで翠が楽になるわけではない。
 どっちにしろ、俺は「葛藤」そのものに共感することはできないし、翠がそれを望んでいるわけでもない。
 翠はその気持ちを察してほしいわけじゃない。
 葛藤していることは話しても、それ以上のことを話そうとしないのはそういうことなのだろう。
 だから、翠本人に訊けなかった。
 人と行動することにどうしてそこまで拘るのか――。
「翠は色々難しすぎる」
 でも、難しいものほど攻略のし甲斐はある。
 冷めたコーヒーを飲みくだす際、出逢った頃の翠を思い出す。
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