光のもとでⅠ
 こんなときは決まって兄ちゃんが姉ちゃん担当。俺は琴担当。
 姉ちゃんの車を兄ちゃんが運転して、女ふたりをマンションのベッドに寝かせたら任務完了。
 マンションと実家は徒歩十五分くらいの距離。
 そのまま実家に帰っても良かったんだけど、試験勉強を見てもらいたくてそのまま兄ちゃんの家に転がり込んだ。
 着替えと制服、その他手抜かりなく持参。

 で、翌朝――。
「行ってきます」と言ってから、実は数分が経過していたりする。
 俺はドアレバーに手をかけたまま固まっていた。
 ドアを隔てた向こうから聞こえてくる会話はとても小さな声だった。
 このマンションは防音完備だけれど、ドアの内側とすぐそこの通路じゃ会話が全く聞こえないわけじゃない。
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