光のもとでⅠ
「これ、なんの話だろう……」
 それがこのときの、俺の疑問だった。
 藤宮先輩らしいっちゃらしいけど、翠葉ちゃん大丈夫なのかな……。
 藤宮先輩の声のあと、彼女の声は聞こえてこなくなった。
 もしかしたら、あまりにも小さな声すぎて聞こえなかっただけかもしれない。
 もしくは、もうそこにはいないのかもしれない。
 静かになったと思ったからこそレバーに力を入れた。
 でも、またすぐもとに戻すことになる。
「翠葉?」と第三者の声が聞こえたからだ。
 つまり、彼女はまだすぐそこの通路にいるのだ。
 いるっていうか――藤宮先輩の言葉に動けなくなっちゃったのかな、と推測。
「具合が悪いわけじゃないんだよな?」
 この人は翠葉ちゃんのお兄さんかな。
 うちの兄ちゃんの親友っていう……。
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