光のもとでⅠ
 靴を脱ごうとしたそのとき、
「蒼兄……学校行くの、怖い――」
 彼女特有の高い声が耳に届いてしまった。
 振り返ったからといって、彼女が見えるわけじゃない。
 ただのドアがあるだけなのに、振り返らずにはいられなかった。
 今、怖いって――。
 学校に行くのが怖いって聞こえた。
「怖いよ――」
 もう一度、彼女はそう言った。
 聞き間違いではなく……。
 こんな小さな声、どうして聞こえちゃったんだろう。
「……翠葉?」
「ツカサみたいにみんなが気づいているのだとしたら、すごく怖い……」
 みんなって誰?
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