光のもとでⅠ
 ピロロロロ――秋斗さんの携帯が鳴った。
「はい。――今は俺の寝室。――ちょっと情緒不安定っぽい。――うん、大丈夫。何かあれば連絡する」
 きっと湊先生か蒼兄だろう。電話がくる程度にはバイタルに変化があったのだ。
「ちょっと待っててね」
 秋斗さんは持ってきたトレイを持って部屋を出ると、すぐにミネラルウォーターを持って戻ってきた。そして、さっきと同じようにベッドに腰掛ける。
「少しこれを飲んで落ち着こう」
 と、ストローの入ったペットボトルを口もとに近づけられた。
 口をつけで吸い上げると、冷たい水が口の中に広がり、食道を伝って胃に流れ込む。
「……キスが嫌だった? それとも、触れられるのが嫌だった?」
「……違うんです……ドキドキしちゃうから――」
「でも、それって恋の醍醐味だと思うんだけど」
「……だって、みんなに知られてしまうのはすごく恥ずかしい――」
 秋斗さんははっとしたような顔で、「バングルか」と袖で隠れている腕に目を移した。
 コクリと頷くと、
「ちょっと待ってね」
 と、自分の携帯を取り出し、何か操作をして私にディスプレイを見せてくれた。
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