光のもとでⅠ
 俺があんな態度を取れば、水面下に隠れていた翠の不安要素は浮き彫りになる。
 翠はそんなに器用な人間じゃない。
 ごまかすということがとことん下手な人間だ。
 悪いけど、そのくらいは想定済み。
 それから、そのくらいの影響力が俺にはある、と少しくらい自惚れさせろ。
 翠の隣に立つことができたとして、どれだけ言葉を駆使しても翠はわからない。
 わからないんじゃなくて、わかっているのに受け入れられないんだ。
 簡単に払拭できるものじゃないからこそ、翠はあんなにも葛藤しているわけで……。
 こんなとき、俺には荒療治しか思いつかない。
「……俺、やな医者になりそう」
 ふと口をついた。
 それでも、もう何度か経験してきた。
 翠はケンカするほどに言い合いをしないとだめなんだ。
 追い詰めて、崖っぷちに立たせて、自分と対峙させることが一番の近道。
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