光のもとでⅠ
「今、みんなに送信されているのは下に表示されている数値。これは安定期の翠葉ちゃんの数値を四時間ループさせているもの。上は実際の数値のバックアップ」
「……え?」
「すっかり忘れていたけど、こういうときのためにそういう機能も作ってあったんだ」
 私はびっくりして言葉も出ない。
「安心した?」
 みんなに知られることがない安心は得たけれど、秋斗さんに対して恥ずかしいと思うことに変わりはない。
 秋斗さんはベッドに上がり、私の隣に横たわる。
 私は秋斗さんの方を向いて横になっていたし、秋斗さんは私のすぐ隣に横になったことから、すっぽりと秋斗さんの胸におさまる形になった。
「泣くときはさ、俺のとこで泣いてよ」
 と、背に腕を回される。
 恥ずかしいしドキドキする。でも、顔が見えないと意外と大丈夫な気がして、そのまま体を預けた。
「そう……力を抜いて? せっかく側にいるのにそんなに緊張していたら疲れちゃうでしょ?」
 華奢だと思っていた秋斗さんの胸は思っていたよりも広くて、男の人なんだな、と思う。
 緊張をとくためにいくつか深呼吸を繰り返すと、何か香りがすることに気づいた。
「……なんの香りですか?」
「……あぁ、ケンゾーのローパケンゾーって香水。嫌い?」
「いえ……水みたい。森林浴をしているときに感じるような香り……」
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