光のもとでⅠ
 ほっとしたとしたら何にだろう……。
 きっと、クラスの人間がいないこと、だろうな。
 バカらしいとは思う。
 けど、それが翠にとってどれほど大きな問題なのかは理解しているつもりで、どうしてこんな方法を取ったかなんて決まっている。
 自分が翠のテリトリーに入るため。
 それだけの理由。
 俺ほどの行動には出ないにしても、海斗も簾条も同じ心づもりだろう。
 だから、そっちはそっちで勝手にしてくれ。

 昇降口を出てしばらく歩くも、翠は俺の隣に並ばない。
 まるで入学してきたときと同じ。
 部室棟から図書棟へ行くとき、テラスで鉢合わせたときのことを思い出す。
 思えば、あの日に翠の身体のことを知ったんだったな……。
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