光のもとでⅠ
「一緒に歩けないほど速く歩いているつもりないんだけど」
 足を止めて肩越しに振り返ると、翠も足を止めた。
 あのときは俺に激突したんだったか……。
 今回もそうだったら良かったものを。
「……あのねっ、かばん、自分で持てるっ」
 相変わらず話の飛躍が達人級。
「……話噛み合ってないけど?」
 指摘しつつ、手を伸ばせば届くところまで戻りかばんを渡した。
「ありがとう……」
 翠は両手でかばんを受け取ると、視線のやり場に困って足元を見る。
「体調は?」
「大丈夫」
「やりなおし」
 やっぱり鶏頭決定……。
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