光のもとでⅠ
 大学の脇を通って私有地に入ってからは十五分……いや、もう少しかかるか。
 そんなことを考えながら芝生広場を歩いていた。
「いい加減隣歩け」
 後ろを向くと、翠はびくりと肩を震わせた。
 四歩戻ってその隣に並ぶ。
「朝の会話をどれだけ大声で話させるつもりなんだ」
 翠の目に映る自分を見た。
「俺が朝に言ったこと、もう一度話すから、今度は忘れずにしっかり覚えておけ」
「さっき空太くんに聞いたからっ、だから大丈夫っっっ」
 思い切り拒否、ね。
「だいたいにして、なんで高崎が知ってるんだか……」
 思わず舌打ち。
 高崎が知っていた理由までは知らないけど、それは大した問題じゃない。
 翠、もう一度言うから――今度こそ、言葉の意味をきちんと考えろ。
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