光のもとでⅠ

02

 治療を終えてマンションに戻ってきたのは四時を回った頃だった。
 ロータリーで車を降りると、
「じゃ、また夕飯のときにね」
「楓先生っ、午後からお休みだったのにすみませんっ」
 運転席の窓まで近づくと、
「なぁに、めったに聞くことのないかわいい弟の『お願い』だったからいいよ」
 と、ツカサに視線を向ける。
 ツカサは面白くなさそうな顔をしていた。
 そのまま楓先生の車を見送る。
 真っ青な空色にメタリックシルバーを混ぜたような車を目で追っていると、
「ゲストルームに戻ったら風呂に入って少し休むんだろ?」
 ツカサに声をかけられ振り返る。
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