光のもとでⅠ
「あのっ……あのっ……」
「何? ゴムの付け方なら秋斗くんが十分知ってると思うわよ?」
「そうじゃなくて――」
「あら、何かしら?」
「……お付き合いしたらそういう関係にならなくちゃいけないんですか?」
 私はどうして初対面の人とこんなことを話す事態に陥っているんだろう……。
 でも、いっそ何も知らない人のほうが訊きやすいかもしれなくて――。
「そこからか……。タクッ、秋斗くんに伝言。セイキョウイク中って言ってきて。仕事の邪魔はしちゃダメよ?」
「わかった! セイキョウイク中ね!」
 拓斗くんはパタパタとスリッパの音をさせて部屋を出ていった。
「さて、翠葉ちゃん話をもとに戻すけど……。必ずしもそうというわけじゃないわ。ただねぇ……秋斗くんの年頃じゃやりたい盛りじゃないかしら? それを我慢させ続けるっていうのは酷だわ」
 目の前で話されていることの大半が許容量オーバーでどうにかなってしまいそうだ。
「でもね、待たせてもいいのよ」
 と、優しい眼差しを向けられた。
「初めてのことって何事も心の準備が必要だもの。時には勇気を出して前に進まないといけないけどね。秋斗くんだって順を追って教えてくれるでしょうし……。その点は心配要らないんじゃないかしら?」
 もう何を言うこともできずに下を向いていた。
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