光のもとでⅠ

30

 今、秋斗さんの寝室には美波さんと拓斗くんがいる。
 拓斗くんのお話は学校での出来事が多い。それをニコニコと笑顔で聞く美波さんと私。
 それはなんだか私の小さい頃を見ているようだった。
 学校へ行って帰ってきて、その日にあった出来事をお母さんや蒼兄に話すことが日課だった。学年が上がるごとに話す頻度は減っていったけれども、こうやって話を聞く時間を作ってもらえることがとても嬉しかった。目の前で、話すことを待ってくれる人がいることに、ひどく安心感を覚えたのを今でも覚えている。
 ふと窓の外を見ると、今にも雨が降り出しそうだった。真っ黒な雲が空一面を覆っている。
「あらやだ、雨降りそうね。そんな空でも見るのが好きなの?」
 美波さんに聞かれて、コクリと頷く。
「でも、今は……できれば青空が見たかったです」
「どうして?」
 と、美波さんとの会話に拓斗くんが加わる。
「……心が晴れそうだから、かな」
「お空がはれているとお姉ちゃんの心もはれるの? どうして? 今、お姉ちゃんの心には雨がふってるの?」
 拓斗くんの質問にどう答えようか考える。
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