光のもとでⅠ
 胸もとをリボンで結ぶタイプで、肩から腕や背中をふわりと包んでくれる。
 全体的にはとてもシンプルに見えるけれど、裾にはとてもクラシカルな模様が編みこまれていた。
「茜先輩は姫のステージとコーラスのステージとあっちこっちで歌いまくるから、あのまま肩出しでいいみたいなんだけど、翠葉は身体冷やしたらダメでしょ?」
「はい……」
「ほーら、そんな顔しないっ! 次はこれっ」
 差し出されたのは五センチほどの高さがあるミュールだった。
 華奢でかわいらしいミュールを前に固まる。
「どうした?」
 アーモンド形のきれいな目が、「ん?」とこっちを見る。
「あの、これ……履くんですか?」
「そうだよ?」
「これを履いて……歌うんですよね?」
< 4,650 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop