光のもとでⅠ
 ゆっくりと身体を起こしダイニングテーブルまで来て、秋斗さんと自分の身長差が蒼兄と同じだと気づく。
 身長が百八十センチという人はどこにでもいるのかもしれないけれど、身近な人との共通点を見つけるとなんだかほっとする。
 ……というのは少しのいい訳で、何かほかのことへ意識を逸らしていないと、起案書のことを考えてしまって顔が緩む。
 スツールに腰掛、しまりのない顔をどうにかしようとしていたら、
「はい、どうぞ」
 と、カップを差し出された。
「ありがとうございます」と答えたつもりだけれど、「嬉しい」と答えてしまった気がするのはどうしてだろう。
 少し落ち着こう、翠葉、落ち着こう……。
 言い聞かせるためにカップを引き寄せ、飲みやすい温度にするために息を吹きかける。と、カップ内で逆流した湯気が自分の方へ返ってきた。
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