光のもとでⅠ
 そう思うと、また恥ずかしくなって下を向かずにはいられなかった。
 ……長い髪の毛ってとても便利。
 私は記憶をなくす前、秋斗さんを好きだったらしい。
 そして、秋斗さんも私を好きになってくれ、一時――ほんの数日とはいえお付き合いをしていたという。
「……私は秋斗さんとどんなお話をしていたんでしょう」
 おそらくはこちらを見たままであろう秋斗さんに視線を移す。
「会話の内容、ってことかな?」
 首を縦に振ると、
「そうだな……。そんなに特別なことは話していなかったと思うよ」
 秋斗さんは一瞬宙を見やり、私に視線を戻した。
「藤山でデートしたときは、そこに咲いている花の話をした。紫陽花の何色が好きとかカサブランカの花言葉とか……」
 その話は入院中にしてもらったものと同じだった。
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