光のもとでⅠ
 話してもらった記憶はあるのに、話をした記憶はない……。
「でも、どうして?」
 両腕をテーブルに置き手を組むと、ゆったりとした口調で訊かれる。
 こんなことを話したらまた笑われてしまうだろうか……?
「……何を話したらいいのかと、考えてしまうんです。蒼兄とも七つ離れているけれど、秋斗さんは蒼兄よりも年上で、そんな大人の人と何を話したらいいのか――」
「……なんでも、なんでもいいんだ。その日の天気とか、その日にあったこととか。好きな音楽の話とか」
 笑ってない……?
 秋斗さんはすごく真面目に、普通に答えてくれた。
「音楽……秋斗さんはどんな音楽を聴かれるんですか?」
「っ……!?」
 え……?
 秋斗さんが一瞬目を見開いた気がする。
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