光のもとでⅠ
「たくさん泣いてしまってごめんなさいっ」
 すごく恥ずかしい……どうしよう――。
 いっぱい泣いて意味のわからない言葉を並べて、自分のどろどろした感情を吐き散らして――。
 でも、「ごめんなさい」だけじゃないの……。
「ありがとう」も伝えたい。
 そう思ったとき、またふわりと優しい香がした。
 秋斗さんの香水の香り。
 最近は自室に入るたびに一噴きしている香水。
 香水だけれど、ルームコロンみたいな使い方をしていた。
 この香りだけは覚えていた。
 秋斗さんのことは何ひとつ覚えていなかったのに、これだけは覚えていた。
 だからか、私の中では記憶に纏わるひとつの支えになっていた。
< 4,683 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop