光のもとでⅠ
 頬をくすぐるふわふわの髪の毛が離れると、茜先輩は窓際へ行き、
「インクってこの箱でしたよね」
 と、ダンボールをカパリと開ける。
 連日あれこれプリントアウトしているから、黒のインクはほかの色よりもなくなるのが格段に早い。
 たいていはツカサがこの部屋にインクカートリッジを取りに来るのだけど――。
 そんなことを考えていると、
「翠、戻るよ」
 ツカサに声をかけられ思考が遮断された。
「はいっ」
 すぐドアに向かって歩き始め、思い出したかのようにくる、と秋斗さんを振り返った。
「秋斗さん、本当に……本当にありがとうございました」
 ちゃんと「ありがとう」を伝えたくて、いつもより丁寧にお辞儀した。
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