光のもとでⅠ
 その扉を先に出た唯兄が振り返り、
「八階より上は雲の上と覚えましょう」
 なぜか小学校の先生みたいな口調だ。
「藤宮病院の新棟、九階十階はいわゆるVIP階。次に高い個室があるのがこの棟の八階。ほかの棟の九階十階はここの八階よりも安い差額ベッド代に設定されてんの。この上階にそんじょそこらの人が長期入院するのは難しい。金銭的なハードルが高いんだ。この棟の八階以上に入院するのはある種ステータスみたいに考える人間たちがいるわけで、さっきの人たちはきっとそういう人種。もしくはそこに誰がいるのかって情報を得たい人たち」
 言われたことをひとつひとつ理解して、たどり着く問いはひとつ。
 高いとは思っていたけれど、そんなに高いの……?
「だから、リィもあぁいう場では気をつけようね。間違っても自分が入院してたなんて言っちゃダメだよ」
「はい」
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