光のもとでⅠ
「でもね、あの秋斗さんが我慢するほどにリィは想われているし、大切にされてるんだよ?」
「え……?」
「あの人、どうでもいい相手ならその場の雰囲気で手ぇ出すから」
 その言葉にさらに体を強張らせると、蒼兄に背中をポンポンと叩かれた。
「翠葉、こういう話を兄からするのもどうかと思うんだけど……。人間の三大欲求って知ってるか?」
「食べることと睡眠と――性欲」
「そう。で、先輩は取り分け性欲が突出してる人」
 言うと、若槻さんが笑いだした。
「あんちゃんわかり易すぎ」
 と、ベッドに転がってお腹を抱える。
「だからね、その人が一ヶ月も我慢してるってすごいことだと思うんだ」
 言ったあと、蒼兄は私から顔を背け、
「もっと我慢しろとは思うけど……」
 と、小さく付け足す。
「でも、怖いものは怖い……。普通にお話するだけじゃダメなの? 側にいるだけじゃダメなの?」
 訊くと、蒼兄は「うーん」と唸ってしまった。
「リィのは恋かもしれないけど、秋斗さんとはステージが違うんだよなぁ……」
「ステージ?」
 若槻さんの方へ向き直り訊いてみる。
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