光のもとでⅠ
「なるほど。そりゃ面倒な人間と鉢合わせたな」
 唯兄が色々と説明してくれたけれど、私はそこではなくて違う部分が気になっていたからあまり深くは考えていなかった。
 改めて先生に疑問をぶつけると、
「そうだなぁ……。ま、使い道はそれぞれ違うだろうが、やることはひとつだな。九階に誰が入院しているのかが知りてぇってとこだ」
「知ってどうするんですか?」
「この階に入院できる人間はそれなりの経済力がある人間に限られる。企業の重役であってもおかしくはない。十階は藤宮一族が使うVIP階。九階は会長や藤宮の上層部の口利きがないと入れない。そんな人間たちは一握りだ。それ以外の企業のトップはこの棟の八階に入ることが多い。誰が入院しているのかを情報として使うのか、お近づきになりたいのか、入院している人間によりけりで使い道は変わるんだろうな。ま、実際には誰もいないし、誰かがいるのならそれなりのセキュリティ対応に変わるがな」
 自分の入院していた階が特別であることは知っていたけれど、ここまで詳しく知ったのは初めてのことだった。
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