光のもとでⅠ
 でも、なんか難しいな……。
 今でも苦しんでいて、入院したいのに万床でベッド待ちの人はたくさんいると思う。
 なのに、誰も使わない病室が常にあるなんて……。
 楓先生がこんな部屋はなくてもいいから病室に、と自分にあてがわれたオフィスを見て言っていたのを思い出す。
 そしたら、なんとなく楓先生に会いたくなった。
「十階にはいつもセキュリティがかかっているが、ここは患者がいない限りはセキュリティをかけてはいないんだ」
「そうなんですか……?」
「スイハが治療で来るときはいつも警備員がエレベーターに同乗していた。違うか?」
「あ――」
「あれはほかの階で停まらないようにノンストップで上がるために、だ」
 知らなかった……。
 でも、言われてみればいつもほかの階で停まることもなく、ほかの誰と一緒にエレベーターに乗り込むでもなく、いつだって警備員さんが同乗していた。
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