光のもとでⅠ
 どうしてか、それを見られるのはとてもいけないような気がした。
「……出せ」
 その言葉には逆らえなくて、仕方なしにメタリックグリーンのケースをかばんから出す。
 先生はそれを受け取ると、ケースをスライドさせて中を見た。
「俺の知らないものがひとつある」
 先生は錠剤を人差し指と親指でつまみ、
「これはなんだ?」
「…………」
「なんだ、と訊いている」
「……滋養強壮剤。おうちにあったものです」
「……誰かに勧められて飲んでるのか? それとも自分でか? 少なくとも、俺は許可した覚えはねぇ」
「……自分で――」
「……もう飲むなよ?」
 私はその言葉に頷くことも返事をすることもできずにいた。
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