光のもとでⅠ
「立ち聞きばれてました? あ、でも、ちゃんとお行儀良くソファに座って聞いてたんですけどね?」
「……唯兄」
 唯兄は苦笑交じりの笑顔で私の隣に座った。
「ごめんね、キッチンにあんなもの置いてて。あれさえ見つけなければこんなことにはならなかったもんね」
「違うっ――私が勝手に手にしただけ」
 秋斗さんが言っていた意味がわかってしまった。
 ――「あのさ、ふたりともどう思う? できることをやらないでいるのと、上限以上のことを無理してがんばりすぎちゃうの。……俺はどっちにも色々問題があると思うんだけど」。
「無理」は薬を使うことで、「問題があると思う」と言ったのは、私がこの薬に頼る行為のことだったんだ。
 間接的だけど、それでもちゃんと注意を促してくれていた。
「涙がたくさん出るね」
 唯兄が笑う。
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