光のもとでⅠ
司先輩が開いたままのドアを軽くノックして入ってくる。
「秋兄、かなり荒れてたけど昼間何かあった?」
話せない私の代わりに蒼兄が口を開いた。
「不肖の妹が、というかなんというか……。経験値の差がネックで本日二回ほど先輩を怒らせてるんだ」
「……二回って、さっきのエレベーターホールの?」
「あぁ……それを入れちゃうと要因は三つになるかな」
蒼兄がかいつまんでエレベーターホールでの出来事を栞さんに話すと、
「秋斗くんて嫉妬深いのね……。悪いことじゃないと思うけど――」
栞さんは私に向き直った。
「でも、秋斗くんは面白くないと思うわ」
「どうして……?」
私が訊くと、司先輩が「鈍感」と一言口にした。
そんなこと言われても……。
恋愛において、人が何で怒るかなんてわからないもの。
『自分がされて嫌なことは人にしないこと』――。
そうお母さんに何度となく言われてきた。私が今日の私のようなことを秋斗さんにされたとしたらどう思うだろう?
たとえば、秋斗さんと一緒に街中を歩いていたとして、すごくきれいな人に秋斗さんが目を奪われたら? 「きれい」って言ったら?
……秋斗さんが目を奪われるほどにきれいな人ならば、私も一緒になって見惚れていそうだ。
そんなことしか想像できなかった。
「秋兄、かなり荒れてたけど昼間何かあった?」
話せない私の代わりに蒼兄が口を開いた。
「不肖の妹が、というかなんというか……。経験値の差がネックで本日二回ほど先輩を怒らせてるんだ」
「……二回って、さっきのエレベーターホールの?」
「あぁ……それを入れちゃうと要因は三つになるかな」
蒼兄がかいつまんでエレベーターホールでの出来事を栞さんに話すと、
「秋斗くんて嫉妬深いのね……。悪いことじゃないと思うけど――」
栞さんは私に向き直った。
「でも、秋斗くんは面白くないと思うわ」
「どうして……?」
私が訊くと、司先輩が「鈍感」と一言口にした。
そんなこと言われても……。
恋愛において、人が何で怒るかなんてわからないもの。
『自分がされて嫌なことは人にしないこと』――。
そうお母さんに何度となく言われてきた。私が今日の私のようなことを秋斗さんにされたとしたらどう思うだろう?
たとえば、秋斗さんと一緒に街中を歩いていたとして、すごくきれいな人に秋斗さんが目を奪われたら? 「きれい」って言ったら?
……秋斗さんが目を奪われるほどにきれいな人ならば、私も一緒になって見惚れていそうだ。
そんなことしか想像できなかった。