光のもとでⅠ

30

 すごく寝た気がする。
 夢も見ず、薬を飲んだら数分で眠りに落ちた。
 身体が休息できました、と言っているのがわかる。
 少し怖いと思うほどに強い薬だった。
 のちに聞いた話では、私はその薬を夏中飲んでいたらしい。
 あの頃の私は、眠れるように、と先生が手を変え品を変え出してくれていた睡眠薬を飲んでいたに過ぎない。
 薬の名前なんて覚える余裕もなかった。
 そして、私がオーバードーズした薬はこの薬だったという。
 その事実にぞっとする。
 あのとき、私はこれを何錠飲んだのだろう。
 自宅にあった分量と私の体重から換算して、致死量には届かないと判断されたものの、念のため、病院へ連れて行かれ胃洗浄が行われた。
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