光のもとでⅠ

33

 時計を見ればすでに五時半を回っていた。
 唯兄に電話をしたらお母さんが出た。
『ただいまっ! 待ってられなくて唯と一緒に迎えに来ちゃった』
「お母さん……?」
『駐車場にいるからゆっくりいらっしゃい』
 そう言われて通話を切る。
 逸る気持ちを抑えつつ駐車場へ行くと、そこにはやっぱり湊先生の車が停まっているわけで、お母さんは後部座席から手を振っていた。
 毎日のようにディスプレイ越しに話をしていたのに、会うことがものすごく久しぶりな気がして「おかえりなさい」を言うまでに少し時間がかかってしまった。
 お母さんはにこりと笑って「ただいま」と言う。
 とても元気で張りのある声で。
 その声を聞き笑顔を見て、やっと自分の足が地に着いた気がした。
 どうしてかわからないけれど、とてもほっとした。
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