光のもとでⅠ
「げっ、碧さん、それ冗談で言ってないでしょっ!?」
「当たり前じゃないっ! 思い切りかわいく仕上げてあげるわよ?」
「俺だけ女装なんてずるいよ。そのときはぜひあんちゃんも道連れに」
「えー? 蒼樹の女装なんてつまらないわよ。だって、あの身長で女装されてもね?」
 唯兄とお母さんは終始そんな会話をしていて、私は呆気に取られていたのだけれど、途中から耐えられないくらいおかしくなって声を立てて笑った。
 三人とも、ほんの数分の道のりをずっと笑いながら話していた。
「ほい、マンション到着! ってことで、リィは碧さんとここで降りちゃいな。俺、女装したらそこらの女の子に負けないくらいかわいくても、一応紳士だからね!」
 満面の笑みで紳士を強調しながらロータリーで降ろしてくれた。
「ゆ、唯兄っ」
「ん?」
「あのね、唯兄は中性的に見えるけど、でも、すごく格好いいと思うっ」
 直後、私の肩にお母さんの手がかかり、お母さんはお腹を抱えて笑い出した。
 そして唯兄も吹きだす。
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