光のもとでⅠ
 二階に着くと、
「ごめん、エントランスで待ってて。車回してくる」
「えっ!? あの、駐車場まで一緒に行きます」
「いや――少しだけ時間ちょうだい。態勢立て直したい」
 彼女をエレベーターに残し、ひとりエレベーターを降りた。
 車に着くまで、自分の心臓を押さえて歩く。
 心臓がうるさい、なんだこれ――。
 車に乗り込み深呼吸をする。
「まいった……なんだよあれ、反則すぎ……」
 ネイビーのシンプルなワンピースに薄く化粧を施された顔。
 いつもはストレートの髪の毛が、今日は柔らかく波打ちサイドの髪の毛をアップにすることで少し大人びて見えた。
 いつもは年相応にしか見えないのに……。
 あの格好なら二十歳には見えるかもしれない。
「……待たせている間も立ってるんだよな」
 そう思えばいつまでもこうしているわけにはいかず、すぐにエンジンをかけエアコンを入れた。
 今日、俺はどれだけいつもと違う自分を目の当たりにすることになるんだろう。
 少し先が思いやられつつ、いつもとは雰囲気の違う彼女を早く見たくてアクセルを踏み込んだ。
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