光のもとでⅠ
「翠?」
「えっ!?」
 慌てて振り返ると、眉間にしわを寄せたツカサがいた。
「それ、しまわないの?」
「え?」
「それ」と指されたものは香水のボトルだと思う。
 でも、ふたつ並んでいるどちらを指したのかはわからない。
「……うん、寝る前に、久しぶりにこっちの香りを一吹きしようと思って」
 そう言って、ユージンゴールドの蝶を人差し指で触れて見せた。

 ツカサはうちへ来ると、申請書に一通り目を通す。
 でも、一枚だけは伏せておいた。
 それは茜先輩から「秘密」と言われたもの。
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