光のもとでⅠ
 ロータリーに車を着けると、エントランスから彼女が出てくる。
 少し考えて、車の内側からドアを開けることにした。
 外に出てドアを開けたいのは山々だけれど、彼女を目の前にしたら抱きしめたくなる。
 でも、今はできない……。
 触れられないって結構つらいものだな。
 俺、今日一日大丈夫だろうか?
 不安になるくらい、今日の彼女はきれいだった。
 慣れない手つきでドアを開け、助手席に座るとドアを閉める。
 目が丸っとしていて、何かそわそわしている。そして訊くんだ。
「秋斗さん、さっき言った"たいせい"の漢字、教えてくださいっ」
「……翠葉ちゃん、今日は意地悪だねぇ……」
「え? 意地悪だなんて……。ただ、どの漢字が当てはまってどういう意味だったのかを知りたいだけで――」
 俺はため息をつき、ハンドルにもたれかかる。
 この天然娘が……。
「白状しますか……。翠葉ちゃんがきれいすぎて驚いた」
「え……?」
 大きな目を見開いて「何?」って顔。
「そんな格好も髪型もメイクも、全部予想外。……俺の笑顔が反則なんてかわいいものだ。今日の翠葉ちゃんは存在自体が反則」
 ちらりと彼女に目をやれば、目を見開ける限り見開いている、そんな顔だった。
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