光のもとでⅠ
 席を立つと、
「翠葉、どこ行くの?」
 海斗くんに訊かれ、いつものメンバーの視線が集中する。
 嘘はつきたくない。
 でも、まだ話したくはないから、
「帰ってきたら話すね」

 教室を出た途端に緊張がピークになる。
 私にとっては香月さんのクラスまで行く、という行動自体がすでにハードルの高いものだからだ。
 私のクラス、B組は昇降口から上がってきた階段の目の前にあるし、図書棟へ行くにはA組のほうへ向かって歩く。
 特教棟へ行くときも体育教官室へ行くときもそれは変わらない。
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