光のもとでⅠ
 栞さんの顔を見てみるも、
「私も今日はとくに何も聞いてないわ」
「珍しいね? 蒼兄が連絡もしないなんて」
「そう言われてみればそうね?」
 首を傾げるお母さんに、栞さんはにこりと笑って答えた。
「でも、今までもそうだったけど、夕飯がいらないときはきちんと事前に連絡してくれるから、帰りが遅くても夕飯は食べるんじゃないかしら?」
 その一言に、私もお母さんも納得した。
 いつもの団らんからふたり欠けただけなのに、なんとなく寂しい。
 もし、蒼兄がうちではない建築会社に就職したら?
 もし、蒼兄が結婚したら?
 もし、唯兄がホテルに戻ってしまったら?
 もし、唯兄が結婚したら?
 この空席の状態が「日常」になるのだろう。
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