光のもとでⅠ
「翠葉、こういうこともあるわ。でも家族だから。離れてても家族なのよ」
 何もかも見透かしたような目で、お母さんがそう口にした。
「家族」――。
 その言葉に心があたたかくなる。
 じわりじわり、と優しく心に染みるように響いた。
「家族」というだけで、無条件で近しい関係でいられることを幸せだと思った。

 食後、私は少し休むとピアノの前にいた。
 栞さんは食後のティータイムのあと十階へ戻り、今は私とお母さんのみがこのゲストルームにいる。
「お母さんピアノ弾いてもいい?」
「いいわよ。電話をかけるときは翠葉の部屋に移動するから、気にせず弾きなさい」
 お母さんは仕事のファイルとノートパソコンを広げた。
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