光のもとでⅠ
 次に出迎えてくれたのはノウゼンカズラ。
 オレンジ色の大きな花が緑の怪物のような木に咲き乱れている。
 重そうな頭を持ち上げては、何か捕食物がないか探しているモンスターのよう。
 きれいさに騙されて近づいたら、パク、と指をたべられてしまいそうだ。
 そんなふうに見える花は相当甘いのか、蟻がいたるところを上り歩いていた。
「きれいなオレンジ……。朝は雲が出ていたけど、すっかり青空になりましたね」
 眩しそうに目を細め、彼女は空を見上げた。
「本当だ、夏らしい空だね」
 確かに午前中はところどころに雲が浮いていた。にも関わらず、今は雲ひとつない青空がそこに広がっていた。
 つないでいる手に少し力がこめられた。そして、自分も同じくらいの強さを手にこめる。
 まるで、「今は今だけのことを考えましょう?」という問いかけに、「そうだね」と答えたかのようなやり取り。
 それは全部俺の想像でしかないけれど、そう間違ってはいないと思う。
 俺たちはところどころにあるベンチに腰掛けては、咲いている花を見て話し、花言葉の話を訊いたり藤宮の所有地に咲く花の話をして過ごした。
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