光のもとでⅠ
 下から見た翠葉ってこんなだったんだ……。
 上から見たら、やたらめったら小さく見えるけど、下から見ても大して変わらないや。
 顔ちっちゃ……。
 髪の毛サラサラ、睫長っ……。
 カップを包む手を小さいとは思わなかったけど、白く細い指が手全体を華奢に見せた。
 俺はさ、司や秋兄みたいな意味で翠葉を好きなわけじゃないけど、それでもやっぱり「好き」なんだよね。「大切」なんだ。
 だから、自分にできないことをほかの人間にやられると腹が立つ。
 今の俺の気持ちの問題ってそんなものなんだ。
 でかい図体のくせにちっさい男で嫌になるな。
 じっと翠葉を見ていたら、口もとが緩んで表情が崩れた。
 声は立てずにふわりと笑う。とても翠葉らしい笑い方だった。
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