光のもとでⅠ
「笑った……」
 思わず人差し指で指してしまう。
 隣の空太も同じように反応する。
 だってさ、今日初めて翠葉の笑った顔を見たんだ。
 やっぱさ、翠葉は笑っててよ。
 なんかそのほうが俺の精神衛生上、都合がいいみたいなんだよね。
 そんな理由じゃダメかな?

「病院へ行くまで、ツカサと何を話したか……だよね?」
「そう。桃華の話だと、昇降口を出てすぐは一緒に歩いてるって感じじゃなかったらしいじゃん?」
 隣に並んで歩いてはいなかった。
 空太から聞いた話でも、翠葉は怯えていて、司を怖がっていたはずなのに。
 翠葉はびっくりしたように目を見開いてから苦笑した。
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