光のもとでⅠ
 仕方ない――。
 携帯からゲストルームに備え付けられている固定電話にかける。
 それも何度かのコール音の末、留守番電話が作動した。
「翠、中に入るから」
 それだけ伝えて切る。
 留守電はそのまま部屋に響くから、リビングにいれば俺のメッセージは聞こえているだろう。
 もし、この通路側にある部屋にいたとしたら……。
 コンコン、軽く窓をノックする。
「入るから」
 指紋認証をパスして中へ入ると、すぐに翠の自室を確認した。
 中に人はおらず、照明の点いていない薄暗い廊下を真っ直ぐ進みリビングへと向かった。
 リビングへ通じるドアを開けると、ソファの後ろからこちらを見ている翠と目が合った。
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