光のもとでⅠ
「……勇気も覚悟もなくカミングアウト?」
 小さな頭だけがコクコク、と意思表示をし、時折しゃくりあげるそれが肩を上下させる。
 海斗は佐野以外の人間が翠に何かを問い質すことはなかったと言っていた。
 それでも、翠は悩む……。
 訊かれても困り、自分を気遣われ問われなくても悩むんだ。
 これはそういう人間。
 俺がサドなだけじゃないと思う。絶対に翠がマゾなんだ……。
「自爆型の阿呆か……」
 口にして後悔……。
 目の前の小動物がさらに大粒の涙をボロボロと零した。
「悪い、言いすぎた……」
 翠の頭に手を伸ばす。
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