光のもとでⅠ
 二時前に届いたメールはひどく心に痛い内容だった。
「……会って抱きしめないと気がすまないわ」
 メール画面を消し、家の中にいる人間にかける。
「出かけます。車の用意を」
『桃華様、今は試験前では……?』
 電話に出た男は、暗に外出を控えるように、と言っているのだろう。
「試験勉強をしに行くだけよ。学年首位がいるところにね。どう? ご不満かしら? 行き先はウィステリアヴィレッジよ。何か問題でも? あぁ、その場には海斗のほかに藤宮司もいるんじゃないかしら」
『……かしこまりました。ですが桃華様、藤宮の方々に敬称をつけることはお忘れなきよう――』
「あら、失念していたわ。車、表に回してもらえるかしら?」
『すぐにご用意いたします』
 通話を切ると携帯を投げつけたい衝動に駆られる。
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