光のもとでⅠ
 寝息はなかなか聞こえてこなかった。だから、そっとインストを流した。
 彼女の健康を願う反面、俺はこの子だからいいのか、と思わなくもない。
 病弱な子が好きというわけではないけれど、翠葉ちゃんがそういう子でなければ、俺は彼女に出逢うことはなかった。
 この学校へ来ることもなく、彼女は違う人生を歩んでいたのかもしれない。
 そして、俺も未だに不特定多数の女との関係を持ち続け、何を思うこともなく、感じることもなく、ただ会長になるまでの道を淡々と歩いていたのだろう。
 起業なんて考えもしなかっただろうな。
 自分の人生はそういうものだと思っていた。
 君に出逢って俺の価値観や考え方が覆されたんだ。
 もう二十歳を過ぎていて、人格形成が出来上がっている人間を変える影響力を君は持っているんだよ。
 それって何気にすごいことだと思うんだけど、君はどう思う?
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