光のもとでⅠ
「……秋斗さん、ラベンダーティーがお好きですよね?」
「…………」
「私に合わせなくても大丈夫ですよ」
 彼女はくすりと笑った。でもね――。
「ラベンダーティーは好きだよ。けど、ちょっと頭を切り替えて仕事をしなくちゃいけないからミントベースのお茶のほうが都合がいいんだ」
「あ、それでしたらモーニングティーを淹れますね」
 お湯はものの数分で沸くし、お茶を淹れるのにも時間はかからない。
 五分もせずにすべての工程を終える。
「はい、どうぞ」
 ダイニングテーブルに置かれたカップから、彼女の手が離れる前にカップに手を伸ばす。
 少しでも彼女に触れたくて。
「ありがとう。ここに仕事場を作って良かった」
 その言葉に彼女は少し困った顔をする。
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