光のもとでⅠ
手を乗せてくれた瞬間に彼女を引き上げ立たせ、眩暈を起こさせた。
卑怯かもな……。でも、俺も今日はまいっているんだ。
君をこの腕に抱いてキスをして――藤山であんなキスをしたにも関わらず、君は受け入れてくれただろう?
それが、どれほど俺を喜ばせたか、君は知らなさ過ぎる。
抱きしめたまま、
「翠葉ちゃん、ここへ来た日のことを覚えてる?」
彼女は少し考えてから、「はい」と答えた。
「あのときの動揺の原因、その理由わかった?」
かなり長い沈黙のあと、
「いえ――司先輩に直接尋ねたら、お見合いじゃないって言われて……」
「それで?」
「安心して、今の今まですっかり忘れていました」
「翠葉ちゃんらしいけど、それ、ちゃんと理由を突き止めたほうがいいと思うよ」
そう言うと、彼女を腕から解放し、右手だけを放さずに歩きだす。
本当は言わなくても良かった。でも、それは司相手にすることではないと思った。
あいつは絶対に自分に不利になるようなことでも俺に話すだろう。どんなことでも、この彼女――翠葉ちゃんのためとなることならば、自分の不利など厭わずに。
現に雅の件は俺に言わないという選択肢だってあったわけだし、あいつならその隙を狙うことだってできたはずだ。
でも、そういうことを司はしない。ならば、俺もそうあるべきだと思った。
"正々堂々"――そんな言葉を使うつもりはない。でも、司はそういうやつだから……。
譲るつもりなんて端からない。が、司相手に姑息な手も卑怯な手も使うつもりは毛頭ない。やるなら目の前から掻っ攫う。
……あぁ、やっぱり"正々堂々"か? いや、違うな。"真っ向勝負"ってところかな。
卑怯かもな……。でも、俺も今日はまいっているんだ。
君をこの腕に抱いてキスをして――藤山であんなキスをしたにも関わらず、君は受け入れてくれただろう?
それが、どれほど俺を喜ばせたか、君は知らなさ過ぎる。
抱きしめたまま、
「翠葉ちゃん、ここへ来た日のことを覚えてる?」
彼女は少し考えてから、「はい」と答えた。
「あのときの動揺の原因、その理由わかった?」
かなり長い沈黙のあと、
「いえ――司先輩に直接尋ねたら、お見合いじゃないって言われて……」
「それで?」
「安心して、今の今まですっかり忘れていました」
「翠葉ちゃんらしいけど、それ、ちゃんと理由を突き止めたほうがいいと思うよ」
そう言うと、彼女を腕から解放し、右手だけを放さずに歩きだす。
本当は言わなくても良かった。でも、それは司相手にすることではないと思った。
あいつは絶対に自分に不利になるようなことでも俺に話すだろう。どんなことでも、この彼女――翠葉ちゃんのためとなることならば、自分の不利など厭わずに。
現に雅の件は俺に言わないという選択肢だってあったわけだし、あいつならその隙を狙うことだってできたはずだ。
でも、そういうことを司はしない。ならば、俺もそうあるべきだと思った。
"正々堂々"――そんな言葉を使うつもりはない。でも、司はそういうやつだから……。
譲るつもりなんて端からない。が、司相手に姑息な手も卑怯な手も使うつもりは毛頭ない。やるなら目の前から掻っ攫う。
……あぁ、やっぱり"正々堂々"か? いや、違うな。"真っ向勝負"ってところかな。